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ニュージーランド-ケープ・キッドナッパーズ・ゴルフ・クラブ |
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「私たちは地球の大地を創造することはできないが、神々が創った自然を利用することは可能だ」現代リンクスのデザインにおいて他の追従を許さないトム・ドークのコース理念である。「もし、ケープ・キッドナッパーズを物語に例えれば、それは英雄たちの叙事詩と言える。その神秘的な地形はマオリ族の伝説を沸騰させてくれる。そして、この地にはキャップテン・クックの新大陸発見という歴史がある」 ニュージーランドに2004年に誕生したケープ・キッドナッパーズは、ドークの数ある傑作の中でも一際抜きんでていて、トム・モリス、アリスター・マケンジージー、そしてドナルド・ロスに匹敵する新生リンクスだ。コーネル大学でコース・デザイン、セント・アンドリュースでキャデイをしながらリンクスの実践を学び、2005年の世界ランキングで一躍13位にノミネートされたパシフィック・デユーンズ(2001年完成、オレゴン州)を設計したドークという天才が創った地の果ての新生コースを紹介しよう。
1933年ノース・キャロライナに生まれ、ヘッジファンドで巨大な財を成したアメリカのタイクーン、ジュリアン・ロバートソンにはゴルフ場開発者としての夢がある。「世界で最も美しい島に他所に類を見ないゴルフリゾートを創り上げ、ニュージーランドを世界ゴルフのメッカにする」という大きな夢だ。その第一弾は2000年にニュージーランド北島の突端、ベイ・オブ・アイランドにあるカウリ・クリフ・ゴルフ・リゾート(世界ランク58位)から始まった。その壮大で圧倒的なコース設計と、大海原に孤島が浮くように散らばる眺望には、彼のゴルフリゾート理念と大きな感動を徹底して味合わされることになる。
このカウリ・クリフが完成するずっと前にドークを誘い、次の候補地を探していたというからロバートソンは筋金入りのゴルフ場開発狂といえる。1年にもわたるロケハンの後二人はケープ・キッドナッパーズを発見、思わず顔を見合わせて握手をした。此処こそがロバートソンの望む天然の要塞であり、ドークがコースセッティングの腕を振るえる天武の地形であった。開発に当たりロバートソンがドークに命じたのはたったの2点。先ずは、世界のトップ・プレーヤーが脱帽する難易度を持つこと。次に、自然のあるがままにコースをレイアウトすることだ。そして、ケープ・キッドナッパーズ・ゴルフ・クラブは2004年に完成すると、瞬く間に世界トップ27位にランクされ、一躍ニュージーランドが世界に誇る名門コースとなった。
私たち世界リンクス探訪隊がこの地を訪問したのは、2005年5月の初旬である。南半球にあるニュージーランドではすでに初冬、雨と風の季節が始まっていた。ツアーのベース、ホークス・ベイという地域はニュージーランド北島の南東に位置し、温暖な地中海性気候で南半球のトスカーナと呼ばれ人気がある土地だ。今、世界中に輸出される白ワイン、ソービニョン・ブランの名産地で40ものワイナリーがある。その中心にあるネィピアーという街は、1931年の大地震で街の殆どが壊滅するという悲劇があったものの、回復は見事で街中の雰囲気をアール・デコ調に統一、観光地として脚光を浴びることになった。小さな街には質素だが個性的なカフェやレストランが並んでいて、背後にある丘陵帯から海辺までの街並みはゴルフ抜きでも十分に楽しめる。名画ロード・オブ・リングスもこの地方をベースに撮影された風光明媚な土地柄である。
それにしても、ケープ・キッドナッパーズ<誘拐岬>とはなんとも物騒な名前ではないか。「うん、1770年にこの地を始めて訪れたキャップテン・クックはこの海岸線を見て、<神々が創造した岬>と感動し暫く船団を停泊させた。クックの滞在中、原住民のマオリ族が船を急襲して通訳の少年を誘拐したことから、<誘拐岬>と命名されたという伝説があるんだ」。今回のニュージー・ゴルフツアーのリーダー兼ガイド役でもある遠藤氏が説明してくれた。立教大学山岳部で私の1年先輩に当たる遠藤さんは、ヒマラヤ遠征をはじめ山男で鳴らし、ニュージーランドでは大橋巨泉氏のパートナーとして<OKギフトショップ>を20年近く共同経営している著名人。ゴルフ暦も30数年、ハンデイ9の強者である。
街道沿いの人気もないゲートの特設電話でゴルフ場入場許可を得る。新たに造られたゴルフ場専用道路以外にコースには着けない仕組みになっているのだ。金に糸目をつけず、コースを作るため先ず8キロにも及ぶこの道を造った、ということだ。山あいの谷間に架かる13もの橋を超え、渓流を迂回しながら登ってゆくと忽然とした丘陵帯に出る。森林もなく風が吹き抜ける広大な台地にぽつねんとクラブハウスが建っている。私たち以外には誰もいなかったことは、「ここまで遥遥やってきた」という想いをより深いものにしてくれた。「今日は貴方達に貸し切りです。2ラウンドでも3ラウンドでも好きなだけプレーしてください。ただし、電動カートはありません」イギリスから来ているヘッドプロのジェレミーが人懐っこい笑顔で迎えてくれた。
あいにくの雨と風であった。10番の谷越えのパー4から闘いは始まる。同行メンバーはアメリカからリビエラ仲間の遠藤氏、彼とは此処に来るまでに、メルボルン、タスマニア、シドニーと5日間で8つのリンクスを踏破してきた。日本からハンデイ6の石井氏、そして、クライスト・チャーチから女性3名を含むニュージーランド永住のゴルフ狂達が5名と賑やかなメンバーである。コースは山稜をねじったような尾根筋と深い谷を巧みに利用した天然コース。ドークの「自然を重視し、できる限り人手をくわえない」ミニマリスト設計理念の代表作だ。山越え、谷越えの数ホールあとシグネチャーホール15番、ホワイトティで600、ブルーで650ヤード、最も難しいと言われるパー5に到達。フェアウエイには1つのバンカーも配置されていないし、さほど狭くないはずだが左は140メートルも垂直に切れ落ちる崖、右も20メートルの急峻な谷のため異常な緊張を強いられ思い切ったスウィングが出来ない。ドークの言葉を借りると、キッドナッパーズ攻略法は「ロングドライブでも 英雄的なチャレンジ・ショットでもない。 |
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 18番ホールのティーショット
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短くても良いからひたすら真っ直ぐ球を打つこと」「そして、最後のピッチショットは絶対にプルしないこと。左へミスショットすれば500フィート下の海辺にボールが落ちるまでたっぷり10秒かかるよ」だ。ようやくの思いでグリーンに立つと凄まじい眺望に息を呑む。海岸までスパッと切り立った断崖の頂上にいるのだ。断崖は石灰石で白く雪が張り付いたように見える。海は荒れていて、白波の飛沫が見える。風の咆哮の中で体が揺れ、まさに想像を絶するゴルフ場だ。 |
9ホールを回ったところで雨脚が強くなりやむなくプレー中止となる。「まあいいさ、明日は晴れるから」用意周到なツアー・プランナーの遠藤先輩。冬のニュージーランドの天気を予想して明日のプレーも予約を入れてあった。「よーし、今夜はワインと海鮮料理で乾杯だ」ワインとグルメに眼のないリビエラの遠藤さんが張り切っている。酒好きの連中のことだ、今夜は昼のプレーのように荒れそうなけはいである。ニュージーランドで特に美味しいのはラム(羊の丸焼き)と特産のグリーン・ムール貝だ。「ラムはいつでも食べられる、今日はムール貝で行きませんか?」ニュージーランド永住組の和田さんの提案である。美人の奥さんと探訪ツアーに参加した和田さんは物静かで温厚な好人物、初対面の私もいっぺんに惚れ込んでしまった。
「美味しいことで世界的に有名なグリーン・マッスル(マッスルはムール貝の英語名です)の90%はニュージーランド産です。ここのムール貝なら新鮮で味は間違いない」と言う現地組の言葉に皆が大賛成。 |
| 早速、情報収集に卓越した才能を持つリビエラの遠藤さんがホテルから2分のところに<マッスル・ボーイ>というムール貝専門店を見つけてきた。「今日はニュージーランド最高のマッスルが食べられるよ」と断定的発言。この店は専門店だけあって、メニューの殆どがマッスル料理。笑顔が可愛いいウエイトレスがニュージーランド訛りで、「今日のムッスルは獲りたて、飛び切リョー」その愛嬌につられて、レモンバター風味やら、ガーリック風味、香采入りピリ辛風とたくさんのムール貝を頼んだ。大きな鍋に山盛りのご馳走だ。ビールと白ワインの乾杯。 |
 ゴルフ仲間たち
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雨が上がったキッドナッパーはその想像を絶するコース設定と戦略的ホールの連続で私たちを翻弄した。1番、415ヤード、ドライバーの落下地点から軽い右ドッグでグリーンは5つの深いバンカーに囲まれている。正確なロングドライブとピンを狙えるターゲット・ゴルフができないとホール攻略は絶対に無理。いきなり難易度の高いホールで、意気込んでいたプレーヤーの顔から笑みが消えるのがわかる。「これまでのゴルフでは経験したことのない何かが始まる」キッドナップ・ゴルフ前奏曲だ。
前方はホークス・ベイの大海原で殆どのホールから海が望め、背後にテ・マタ峰が迫るコース設計で、ブルーがプロを対象とした7,113ヤード、白テイーでもアップダウンのきつい6,686ヤード、ロバートソンとドークの名コンビが「挑戦とスリルの連続」を確約してくれている。最長で220ヤード、平均170ヤードの谷越えが5ホールもあり、ここでも多くの「ドラマと悲劇が」生まれる。そして、例えば5番、420ヤード、パー4。フェアウエイは広いがセンターに2つの深いバンカーが口をあけて待ち構えている。運良く逃れても、第2打はまさに英雄的な(私には一か八かの)チャレンジ・ショットが要求される。 |
| うねったグリーンの左右には2つずつのスコットランド仕立て巨大なバンカー、前下がりのグリーンの下半分にオンしても、オーガスタの9番のように30ヤードは確実に転がり落ちてしまう。まさにキッドナッパーズを代表する典型的なホールだ。13番は一番短い130ヤード、パー3。ドークが言う。「誰でも乗せることはできる。でも、グリーンのセンターを捉えないと崖に転がり落ちるよ」一番優しいホールでさえトリックが隠されていて<誘拐岬>でのゴルフは最後までガッツとナーヴが要求されるホールばかりなのだ。 |
 13番ショットホール(130y)
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最後に、ドークからのメッセージをお伝えしよう。ケープ・キッドナッパーズは 「一生に一度でいいからプレーすべきコース」「私が創造した守備態勢はこうだ。まず、木がない地形での距離をより長く見せるイルージョン。ホールごとに風の流れが変わる風向きの幻覚。フェアウエイバンカーとガードバンカーは深く切ってあり難易度を高めている。そして海に向かってかすかに傾いたグリーン。この傾斜は視覚では感知できず、打った後で発見するから厄介なはずだ」
そして、トム・ドークが続ける。「さあ、ここでのプレーを思う存分楽しんでください。このコースを体験してください。貴方が世界中、どこへ行っても此処のようなゴルフを経験することは2度とないでしょうから」 |
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